新アライアンスを切り拓く、3社の新しいチャレンジ

NMKVは日産自動車と三菱自動車の軽自動車の商品企画・開発マネジメントを行う、日本ではこれまでにない初のジョイントベンチャーとして2011年6月に設立。NMKVは両社の要望をアレンジして商品企画・開発マネジメントを行い、日産自動車と三菱自動車がそれぞれデザインし、三菱自動車が開発と生産を担当する。具体的には、三菱自動車の技術センター(愛知県岡崎市)で設計・実験といった開発の実務を行い、水島製作所(岡山県倉敷市)で生産した。両社が2013年6月に発売したハイトワゴン、2014年2月に発売したスーパーハイトワゴンは、NMKVが手掛けた第1世代の軽自動車である。

日産自動車 DAYZ(2013年6月発売)

三菱自動車 eK wagon(2013年6月発売)

軽自動車は国内乗用車市場の約4割を占める重要セグメントであり、より競争力を高めた第2世代の次期車を投入すべく、日産自動車、三菱自動車、NMKVの3社は、2015年10月、新しいチャレンジに取り組むこととなる。NMKVの開発マネジメント体制を強化し、そのもとで開発は日産自動車テクニカルセンター(神奈川県厚木市)、生産は従来通り三菱自動車の水島製作所が担当するという新しいプロセスの導入である。日産自動車が開発して三菱自動車が生産する、言葉では簡単だが、そこには様々な困難が待ち受けていた。

NMKV設立時からの3社体制

新プロセス導入後の3社体制

第1世代の現行車では三菱自動車の開発・生産プロセスに日産自動車のノウハウの一部を取り込んだ程度であるのに対し、第2世代の次期車では日産自動車の開発プロセスと三菱自動車の開発・生産プロセスを摺り合わせ、新しいプロセスを構築しなければならない。
両社の工程は名称も違えば、要件、期間など大半で異なる。ここでの翻訳作業、言葉合わせには膨大な工数が発生した。開発責任者の斎藤CVE(Chief Vehicle Engineer)、生産責任者の西山CPEO(Chief Production Engineering Officer)とも、「気が遠くなるような作業だった」と当時を振り返る。最高技術責任者の堀内CTO(Chief Technology Officer)が「自社内の生産・開発部門の連携をも上回る」と評する、NMKVをハブとした3社の良好なコミュニケーションにより、困難を極めた新プロセスの構築に成功したのである。

遠藤CEO

2016年10月、三菱自動車はルノー・日産アライアンスのメンバーとなり、シナジー創出のための多岐にわたるプログラム、例えば共同購買、工場共用、技術共有などの開始がアナウンスされた。

「NMKVが手掛ける第2世代の軽自動車は、新たなアライアンスのもとで行う最初のプロジェクトになります。NMKVはこれまでに積み上げてきた3社でのノウハウを最大限に活かし、次期車を必ず成功させたい」

最高経営責任者の遠藤CEOは意気込みを語った。